デザイナーの提案書の書き方|受注を取る構成テンプレと例文【Web/グラフィック/UI別】

デザイナーの提案書は、次の5つの構成で書くと受注率が上がります。「①表紙・アジェンダ → ②現状分析と課題 → ③デザインコンセプト → ④ベネフィットとROI → ⑤進行スケジュールと体制」の順です。作品を並べるのではなく、クライアントのビジネス課題を起点に「なぜこのデザインなのか」を論理で示すことが、価格競争を抜け出して提案を通す鍵になります。
本記事では、この5構成をそのまま使える章立てテンプレートに落とし込み、ビフォー/アフターの例文付きで解説します。さらにWeb・グラフィック・UI/UXの職種別に、クライアントが重視するポイントとそのまま流用できる提案書の例文をまとめました。
デザイナーの提案書の書き方|受注を取る5つの構成
受注を取る提案書は、表紙・課題・コンセプト・ROI・スケジュールの5構成で書きます。各章で「何を書くか」を先に押さえておけば、ヒアリング内容を順番に当てはめるだけで、論理の通った提案書が完成します。まずは全体像を章立てテンプレートで確認します。
| 章 | 書くこと | 受注に効くポイント |
|---|---|---|
| ①表紙・アジェンダ | プロジェクトの目的を明文化したタイトル+目次 | 「ビジネスを理解している」第一印象を作る |
| ②現状分析と課題 | ヒアリングを整理し、成果が出ない原因を言語化 | クライアントが気づいていない潜在課題まで指摘 |
| ③デザインコンセプト | デザイン要素ごとに「課題解決のための理由」を明記 | 「かっこいいから」ではなく論理で説明する |
| ④ベネフィットとROI | デザイン導入後の変化をビジネス価値に変換 | 「離脱率◯%改善」など投資対効果に触れる |
| ⑤進行スケジュールと体制 | 納期・担当・修正回数・クライアント側の作業を明記 | 開始後のトラブルを防ぎ安心感を与える |
以下、各章で具体的に何を書くかを掘り下げます。
1. 表紙・アジェンダ:プロフェッショナルな第一印象
表紙は提案の「顔」です。単に「〇〇様 提案書」とするのではなく、 「〇〇ブランドの認知拡大に向けたリブランディング案」 のように、プロジェクトの目的を明文化したタイトルを付けましょう。第一印象で「この人はビジネスを理解している」と思わせることが目的です。
なお、表紙に限らず提案書全体を「読まれる資料」に仕上げる視線誘導や配色の原則は、営業資料デザインのコツで詳しく解説しています。
2. 現状分析と課題:クライアント以上に課題を言語化する
ここが最も重要なセクションです。ヒアリングした内容を整理し、「現在、何が原因で成果が出ていないのか」を客観的なデータやユーザー視点で指摘します。クライアント自身が気づいていない「潜在的な課題」を言語化できると、専門家としての信頼が一気に高まります。
顧客の潜在的な悩みを掘り起こして課題解決のプロセスを言語化する方法は、デザインシンキングを営業に活かす提案資料の構成も参考にしてください。
3. デザインコンセプト:なぜ「その形」なのかを論理的に説明
「かっこいいから」「流行りだから」という説明は厳禁です。「ターゲット層である30代女性の安心感を醸成するために、丸みのあるフォントと彩度を抑えた配色を採用しました」といったように、すべてのデザイン要素に 「課題解決のための理由」 を持たせます。
4. ベネフィットとROI:デザインをビジネス価値に変換
デザインを導入した結果、どのような変化が起きるかを伝えます。「離脱率が15%改善される見込みです」「ブランドの統一感が出ることで、営業資料の作成コストが削減されます」など、可能な限りビジネス上のメリット(投資対効果)に触れましょう。
5. 進行スケジュールと体制:安心感を与えるプロジェクト設計
いつまでに何が完成し、誰が担当するのかを明記します。特に修正回数のルールや、クライアント側に発生する作業(素材提供など)をあらかじめ示しておくことで、プロジェクト開始後のトラブルを防げます。
この5構成は、デザイナーに限らず提案書・営業資料に共通する「通る型」です。1枚に凝縮するペライチ版の作り方は営業資料をペライチ(1枚)にまとめる構成術にまとめているので、初回接触用の短い提案にはこちらも使い分けてください。
ここで、提案書の標準的な構成フローを図解で確認してみましょう。

【ビフォー/アフター】提案書の例文はこう変わる
提案書の例文は「作品の説明」から「課題解決の説明」に書き換えるだけで、伝わり方が大きく変わります。同じデザイン提案でも、ビフォー(作品起点)とアフター(課題起点)では受け取られ方が違います。書き換えのイメージを1例で確認します。
ビフォー(作品起点・通りにくい)
トップページのファーストビューを刷新します。トレンドの大きな写真と余白を活かしたモダンなデザインで、洗練された印象に仕上げます。
アフター(課題起点・通る)
現在のトップページは訪問者の60%を占めるスマホユーザーが最初の3秒で離脱しています。ファーストビューで自社の強みを一目で伝えるレイアウトに刷新し、追従型のCTAを配置することで、問い合わせへの導線を改善します。
違いは「何を作るか」ではなく「 どの課題を、どう解決し、何が変わるか 」を語っている点です。次章では、この書き換えを職種別の例文に落とし込みます。
職種別で使える提案書の例文(Web/グラフィック/UI)
職種ごとに、クライアントが重視するポイントは異なります。Web・グラフィック・UI/UXそれぞれで「通る」ための構成案と、そのまま提案書に使える具体的な例文をまとめました。
Webデザイン:コンバージョン率を改善する提案
Webデザインの提案では、見た目の美しさだけでなく、 「ビジネスの成果(CVRなど)」 が中心になります。デザインの変更がどう売上に直結するかをロジカルに示します。
【そのまま使える提案書の例文】
- プロジェクトの目的: 「〇〇株式会社様 コーポレートサイト リニューアル提案 〜スマホからの問い合わせ獲得数を1.5倍にするUX改善〜」
- 現状分析と課題: 「貴社の現在のサイトはPC閲覧を前提とした設計になっており、訪問者の60%を占めるスマートフォンユーザーが『最初の3秒』で離脱している状況です。特に、問い合わせフォームへの導線が深く、見込み顧客を取りこぼしているという課題があります。」
- 解決策(デザイン提案): 「モバイルファーストの設計へと刷新し、ユーザーの親指が届きやすい画面下部に追従型のコンバージョンボタン(CTA)を配置します。また、ファーストビューで自社の強みを視覚的に伝えるレイアウトに変更し、ページの読み込み速度を2秒以内に短縮することで、離脱を最小限に抑えます。」
- 期待される効果(ROI): 「離脱率の改善と導線の最適化により、月間の問い合わせ件数を現在の1.2〜1.5倍に引き上げることを目指します。」
グラフィックデザイン:ブランド価値を浸透させる提案
グラフィック(ロゴ・パンフレット・パッケージ等)の提案書では、 「感情的な繋がり」 や 「一貫した世界観」 が重要です。企業が伝えたいメッセージをどう視覚化するかに焦点を当てます。
【そのまま使える提案書の例文】
- プロジェクトの目的: 「〇〇ブランド 新規パッケージおよび販促ツール デザイン刷新のご提案 〜ターゲット層の『安心感』を醸成する統一デザイン〜」
- 現状分析と課題: 「現在、既存の販促ツールは媒体(Web、パンフレット、名刺など)ごとにデザインのトーンがバラバラになっており、ブランドとしての信頼性や一貫性を損なっている点が課題です。現場の営業担当者からも『資料ごとに雰囲気が違い、自社の強みを説明しづらい』という声が挙がっています。」
- 解決策(デザイン提案): 「トーン&マナーを統一したビジュアルガイドラインを新たに策定します。ターゲット層である30代・40代女性の『安心感』を醸成するため、彩度を抑えたアースカラーの色彩設計と、可読性の高い丸ゴシック系フォントを採用。一貫したブランド体験を提供できるツール群を制作します。」
- 期待される効果(ROI): 「視覚的なブランド認知度の向上はもちろん、すべての資料のトーンが統一されることで、営業現場での『話しやすさ(信頼感の担保)』が強化され、商談の進行がスムーズになります。」
UI/UXデザイン:ユーザー定着率を高める操作性の提案
UI/UXの提案書の書き方では、 「使い勝手の良さ(ユーザビリティ)」 と 「継続利用(リテンション)」 がキーワードです。
【そのまま使える提案書の例文】
- プロジェクトの目的: 「〇〇アプリ オンボーディング画面UI改善案 〜初期離脱を防ぎ、アクティブユーザーを増やす設計〜」
- 現状分析と課題: 「貴社のアプリは初期の操作ステップが多く、新規ダウンロードユーザーの40%が『初期登録』の途中で離脱しています。入力フォームの項目が1ページに密集しており、ユーザーに心理的負担をかけていることが原因と推測されます。」
- 解決策(デザイン提案): 「入力項目を必須なものだけに整理し、登録ステップを現在の5ステップから3ステップへと削減します。さらに、現在の進行度を示すプログレスバーを上部に配置し、視覚的なフィードバックを強化することで、ユーザーが迷わず直感的に操作を完了できるUI設計へと改善します。」
- 期待される効果(ROI): 「初期のオンボーディング完了率を20%向上させることで、アプリの継続利用率(定着率)を高め、長期的なLTV(顧客生涯価値)の最大化に寄与します。」
提案を具体化する際には、提案書内に Figma などのプロトタイピングツールのリンクを貼り、実際の動きを見せることで、クライアントの納得感はさらに高まります。なお、デザインだけでなくシステム開発も伴う大規模な提案を行う場合は、システム開発の提案書・企画書の書き方も併せて参考にしてください。

提案書をアップデートする最新のトレンド
クライアントは単なる「デザイン制作」ではなく、 「持続可能なビジネスパートナー」 を求めています。提案書に以下の要素を盛り込むことで、競合他社と差をつけることができます。
AI活用によるスピードと精度の両立
「AIを使って効率化しています」と正直に伝えることは、今やポジティブな要素です。AIで生成した複数のバリエーションを初期段階で提示し、そこから人間がブラッシュアップしていくプロセスを説明することで、 「スピード」と「クオリティ」の両立 をアピールできます。
アクセシビリティとサステナビリティの明記
特にWebデザインにおいては、 「アクセシビリティ(誰でも使いやすい設計)」 と 「サステナブル Web デザイン(データ軽量化による環境負荷低減)」 が国際的な標準になりつつあります。これらを標準装備として提案に含めることで、クライアントのCSR(企業の社会的責任)への貢献も示せます。
提案書を最強の営業ツールにする3つのコツ
どんなに優れた構成でも、相手に「伝わらなければ」意味がありません。最後の仕上げとして、以下の3つを意識してください。
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専門用語を徹底的に排除する 「カーニング」「ホワイトスペース」「ヒーローイメージ」といった言葉は、クライアントには伝わりません。「文字の間隔」「余白」「トップのメイン画像」など、誰でも理解できる言葉に置き換えましょう。
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Before/Afterを視覚的に見せる 言葉で説明するよりも、 「今の課題がある状態」と「改善後の理想の状態」 を並べて見せるのが最も効果的です。視覚的な変化を提示することで、投資の価値が直感的に伝わります。
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複数の「松竹梅プラン」を用意する(比較サンプル) 「やるかやらないか」ではなく、 「どのプランでやるか」 という比較検討の思考にクライアントを誘導します。提案書の終盤で以下のように比較表として見せると効果的です。
- 【松】プレミアムプラン(150万円〜): 徹底的なユーザーリサーチ、ブランドガイドライン策定、全媒体(Web・紙・動画)のデザイン統一を含むフルセット
- 【竹】スタンダードプラン(80万円〜): 主要な課題であるWebサイトリニューアルとロゴの刷新を行う、最も推奨するバランスの良いプラン
- 【梅】ライトプラン(40万円〜): 予算を抑え、既存のWebサイトのコンバージョン導線のみを改修する最低限のプラン
このように3つの選択肢を具体的な金額感とともに提示することで、予算のミスマッチによる失注を防ぐことができます。また、オンライン商談で提案を行う場合は、画面越しでも決裁者の納得を引き出せるよう、オンライン商談の営業資料の作り方も併せて意識してみてください。

よくある質問(FAQ)
Q. デザイナーの提案書は何ページくらいが適切ですか?
A. 内容次第ですが、「①表紙②課題③コンセプト④ROI⑤スケジュール」の5構成が過不足なく入っていることが基準です。ページ数を増やすより、各章で論理が一貫しているかを優先します。短い初回接触なら1枚に凝縮する方法も有効です。
Q. 提案書の例文を使うとき、どこを変えればよいですか?
A. 本記事の例文は「現状分析と課題」「解決策」「期待される効果(ROI)」が骨格です。ヒアリングで得た固有の数値(離脱率・登録ステップ数・改善目標など)を自社案件のものに差し替えれば、そのまま提案書として機能します。汎用的な美辞麗句のままにせず、クライアント固有の課題に具体化することが受注の分かれ目です。
Q. デザインの良さが伝わらず価格競争になります。どうすればよいですか?
A. 価格競争に陥る原因の多くは、提案がデザインの「見た目」を語っているためです。「現状の課題 → デザインによる解決 → ビジネス上の効果」の順で語ると、価格ではなく「課題解決の価値」で比較されるようになります。本記事の構成と例文はその転換を狙ったものです。
まとめ:デザインを「課題解決の論理」に変えて受注を取る
デザイナーの提案書は、「①表紙②現状分析と課題③デザインコンセプト④ベネフィットとROI⑤進行スケジュール」の5構成で組み立てると、受注率が上がります。デザインの美しさを語る前に、まずはクライアントのビジネス課題に寄り添い、それを解決するための論理を組み立てましょう。
「なぜ、このデザインなのか」を明確に言語化できるようになれば、価格競争を抜け出して高単価な案件も獲得しやすくなります。本記事の章立てテンプレートと職種別の例文を、自社の次の提案にそのまま当てはめてみてください。
なお、提案書を提示する前段階の準備として、営業ポートフォリオの作り方や、売り込まずに案件を獲得する仕組みづくりについても知っておくと、案件獲得がさらにスムーズになります。




