成約率を上げる提案資料の構成と作り方3ステップ|デザインシンキングを営業に活かす

ヒアリング内容を詰め込んだ提案資料を作っても、競合とのコンペで価格勝負になり、決裁者の心を動かせないケースは少なくありません。
提案の成約率を上げるには、顧客自身も言語化できていない潜在的な課題を発見し、共に解決策を練り上げるプロセスが必要です。この課題発見から解決までのアプローチにおいて、デザインの考え方を営業スキルとして取り入れる「デザインシンキング」が強力に作用します。
本記事では、顧客の深い悩みに寄り添うヒアリング術から、デザインシンキングを応用して成約率を劇的に高める提案資料の構成、作り方のステップまでを具体的に解説します。オンライン商談などでの具体的な見せ方を改善したい方は、成約率が劇的に上がる営業資料の作り方と構成も併せてご確認ください。
デザインシンキングを営業に活かすメリットとは
デザイン思考とは、徹底的にユーザー(顧客)に共感し、試行錯誤を繰り返しながら本質的なニーズを掘り起こす思考法です。これを営業に応用することで、単なる「物売り」から脱却し、顧客のビジネスを共に形作るパートナーとしての地位を確立できるようになります。
従来の「ヒアリングして、持ち帰って、完成した提案書を出す」という一方通行の流れではなく、「共に課題を探り、仮の解決策をぶつけ、一緒に最適解を創り上げる」という循環型のプロセスを生み出せるのが最大のメリットです。

提案資料の構成に直結するデザイン思考の5つのステップ
デザイン思考を営業プロセスに落とし込むには、「共感→共創→検証」という流れを意識する必要があります。
1. 共感(Empathize):顧客の「不」の裏側を覗く
営業における「共感」は、単に相手の話を相槌を打って聞くことではありません。顧客が置かれている環境、日々の業務で抱くストレス、そして理想とする姿を顧客と同じ視点で追体験することです。
「売上を上げたい」という言葉の裏には、「競合にシェアを奪われる恐怖」があるかもしれません。こうした感情の動きにフォーカスし、なぜその課題が重要なのかを深く理解することが、後々の提案資料の構成を大きく左右します。
2. 問題定義(Define):真の課題を言語化する
共感フェーズで得た膨大な情報から、解決すべき「真の問い」を立てます。顧客が「新しい管理ツールが欲しい」と言っていても、本質的な課題は「部門間の情報共有文化が欠けていること」かもしれません。
「私たちは、〇〇という状況にある顧客が、△△という問題を解決し、□□という価値を得られるように支援すべきである」という形で、解決すべき課題を再定義します。
3. アイデア創出(Ideate):解決策の幅を広げる
自社製品の機能をいきなり当てはめる前に、フラットな視点で解決策を考えます。「もし自社製品がなかったら、どうやってこの問題を解決するか?」という問いを自分に投げかけることで、製品の枠を超えた付加価値の高い提案の種が見つかります。
4. プロトタイプ(Prototype):完成前に「仮」をぶつける
営業におけるプロトタイプとは、完成された美しいスライドではありません。1枚のラフ構成案や手書きの図解です。詳細を詰めすぎる前に、解決策の方向性が合っているかを顧客に確認します。
5. テスト(Test):顧客と一緒にブラッシュアップする
プロトタイプを提示し、顧客からフィードバックをもらいます。「ここはイメージと違う」「この機能は不要だ」といった反応は、提案の確度を高めるための貴重なデータになります。
潜在ニーズを掘り起こす「共感マップ」の活用法
顧客の深層心理に迫るために有効なツールが「共感マップ(Empathy Map)」です。これは、ターゲットとなる人物が普段どのような体験をしているかを6つの視点で整理するフレームワークです。
ヒアリングの際、以下の6項目を意識して問いを立てることで、表面的な要望の奥にある潜在ニーズを効率的に掘り起こせます。
- 見ていること (Sees) :競合他社の動き、上司からの期待、市場のトレンド
- 聞いていること (Hears) :現場の不満、取引先からの要望、業界の噂
- 言っていること・行っていること (Says & Does) :会議での発言、実際の業務フロー、解決のために試したこと
- 考えていること・感じていること (Thinks & Feels) :本当に大切にしたい価値観、人には言えない不安
- 痛み(Pains) :現状のストレス、失敗への恐怖、リソース不足
- 得られるもの (Gains) :成功した時の喜び、社内での評価、業務の効率化
例えば同じ「業務効率化ツール」を提案する場合でも、顧客が「社内評価を上げたい(Gains)」と考えているか、「現場の不満を解消したい(Pains)」と考えているかによって、提案資料の構成と訴求ポイントは180度変わります。以下は、情報共有に課題を抱える営業マネージャーを想定した共感マップの具体例です。
| 視点 | 具体的な声・状況のサンプル |
|---|---|
| Sees(見ている) | 競合が次々と最新のSFA(営業支援システム)を導入しているニュース記事。 |
| Hears(聞いている) | 現場の営業から「入力作業が多くて本来の業務に集中できない」という不満。 |
| Says & Does(言動) | 会議で「情報共有を徹底しろ」と号令をかけるが、結局エクセル管理のまま。 |
| Thinks & Feels(思考) | 「本当は属人化を解消したいが、新しいツールを定着させる自信がない…」 |
| Pains(痛み) | 導入失敗によるコストの無駄遣いと、上層部からの厳しい評価。 |
| Gains(得られるもの) | チーム全体の営業プロセスが可視化され、安定して売上目標を達成できること。 |
このように解像度高く顧客を理解することで、単なるツールの機能説明ではなく「定着に向けた伴走支援」を提案の軸に据えるといった、刺さる構成を作ることができます。

提案資料の構成を作るためのプロトタイプ提案3ステップ
デザイン思考を営業に活かす最大の利点は、手戻りを最小限に抑え、成約までのスピードを上げられることにあります。その鍵を握るのが、顧客と一緒に提案資料の構成を作り上げる「プロトタイプ(仮提案)」のアプローチです。
多くの営業担当者は、ヒアリングした情報を元にいきなり完成度の高い資料を作り込もうとします。しかし、前提条件が間違っていた場合、資料作成にかけた時間はすべて無駄になってしまいます。そこで、以下の3ステップで提案資料の精度を高めていきます。
ステップ1:1枚の「骨子案」で合意をとる
まずは1枚のペライチ、またはスライド1枚で、提案の骨子だけを提示します。デザインや装飾は不要で、テキストベースの構成案(プロトタイプ)を作成します。
【骨子案のサンプル構成】
- 現状の理解 :「現在はエクセルで顧客管理をしており、入力漏れが多発している」
- 真の課題 :「単なるツールの不在ではなく、入力するメリットを現場が感じていないこと」
- 解決策の方向性 :「入力の手間を最小化し、自動でレポートが生成される仕組みの導入」
- 期待される効果 :「現場の事務作業を週5時間削減し、本来の営業活動に注力できる」
この段階で方向性を確認することで、顧客を「評価者」から「一緒に解決策を練る共創者」へと変えることができます。
ステップ2:顧客のフィードバックを反映する
骨子案を見ながら、顧客と対話を行います。「ここはもっと現場寄りの表現にしてほしい」「この機能は今回対象外でいい」「費用の目安もこの段階で知りたい」といったリアルなフィードバックをもらいます。
この微修正の繰り返しこそが、デザイン思考における「テスト」のプロセスです。顧客自身がフィードバックを重ねることで、提案に対する当事者意識(納得感)が生まれます。
ステップ3:共創された「最終提案」を提示する
顧客の意見が盛り込まれた最終的な提案資料は、もはや営業担当者からの押し付けではなく、顧客と一緒に作った解決策となります。合意済みの骨子をベースに詳細なスライドへ落とし込むため、プレゼン時の「思っていたのと違う」という悲劇を防ぎ、成約率は飛躍的に向上します。
より実践的な提案書のまとめ方については、デザイナーの受注率が上がる提案書の書き方と構成術 も参考に、ビジネス価値に変換する構成の手法を取り入れてみてください。
デザインの原則を取り入れた提案資料の構成
プロトタイプで合意を得た後は、最終的な資料に落とし込みます。ここでは、営業資料としての説得力を高めるための提案資料の構成ポイントを紹介します。
現代のトレンドは「情報の引き算」です。一目でメッセージが伝わる視覚的な分かりやすさが求められます。
- 表紙(タイトル) :顧客のメリットを直感的に伝える
- 現状分析 :顧客の言葉(ボイス)を引用し、共感を呼ぶ
- 課題定義 :「真の課題」を1つの問いとして提示する
- 解決策 :図解を用いて、導入後の変化(Before/After)を可視化する
- スケジュール・費用 :意思決定に必要な情報を過不足なく提示する
特に解決策のセクションでは、文字情報を減らし、図解を多用して顧客の右脳に訴えかけることが重要です。視線誘導や配色など、成約率に直結するデザインの原則については、営業資料デザインのコツと作り方 を参考にしてください。また、見やすく伝わるスライドを作るための具体的なレイアウト手法については プレゼン資料デザインの教科書 でも詳しく解説しています。

まとめ:デザイン思考でビジネスパートナーへ
デザインシンキングを営業に活かすことは、単なるテクニックではありません。顧客を深く理解し、その痛みに寄り添い、共に解決策を模索するアプローチです。
- 共感マップ で顧客の深層心理を可視化する
- プロトタイプ(仮提案) で顧客と対話を重ねる
- デザインの原則 で伝わる提案資料の構成を構築する
これらのステップを実践することで、あなたの提案は選ばれる理由へと変わり、顧客との信頼関係はより強固なものになるはずです。
コンペや大規模な提案でさらに勝率を上げたい場合は、システム開発のコンペを勝ち抜く企画・提案書の書き方 などの実践的なノウハウも併せて活用し、次世代の営業スタイルを切り拓いていきましょう。



